Real Contact in Osaka workshop  4.25-29 水祝

2005 年に初めて Forsythe company に招聘され、ダンサー達の為に私の身体メソッドを紹介した。(以後、毎年招聘され指導に行っている)。
その初めての時、一番光っていたのが若手のヤニスとマーツだった。
帰国後すぐに横浜でダンサー達の為の WS を開いた。
その時、私にもっと詳しく習いたいと来日したのがマーツだ。
今回は、それから 2 度目になる、プライベートでの来日である。
(ヤニスは昨秋 2 ヶ月間私の元に滞在し、日野メソッドに汗を流した。そして、日本のダンサー達とも舞台を共にしてくれた。一緒に舞台を踏んだダンサー達は、一段も二段も成長したのは記憶に新しい)

マーツ( Marthe Krummenacher )は、オランダの N,D,T,company の若手トップダンサーの地位を確立した。
その才能に多くの振り付け家がこぞって彼女に振り付けをしたがった。
それほど、魅力的だということだ。
しかし、彼女はそれを振り切り Forsythe company を選んだ。
そのおかげで私と出会えたのだが。
そのマーツが休暇が出来たので、 2 週間程私の元に習いに来る。( 3 月にはオランダの Emio Greco のカンパニーに招聘されて指導に行くが、その時、マーツもヤニスも助手で手伝ってくれる)

今回の Workshop は、基本的にはマーツの為のものだったのですが、ヤニス同様に折角だから日本のダンサー達と一緒に、ワークを受けて貰うことにしました。
世界のトップダンサーの雰囲気、取り組み方、それを肌で感じ、みんなのステップアップになって欲しいと企画したのです。
世界のトップダンサーが私の元に来る時には、ワークショップをする、という企画は今後も続けて行きます。

本気で身体に向き合う35hours
この春のワークショップは、ダンスボックスが大阪から神戸へ移転するため、急遽江坂で行うことになったものです。
ですから、毎回行っているshowcaseはありません。その分、密度濃く身体に向き合うことが出来ます。
世界のトップダンサーと共に徹底的に身体と向き合い、感性を磨き上げようではありませんか。

今回の大阪でのワークショップは、マーツやエイミーが参加するということだったので、彼女たちが単独では稽古しにくい「意識」に関すること、そして、日野メソッドでの基本となる「胸骨操作と連動」に焦点を当てて行った。

「意識」に関することの基本は、相互の向かい合いであり、相手の正面を感じ取ることだ。
もちろん、これは「武禅」でのテーマと同じだ。
ここで難しいのは、感じ取るということだ。
大方の場合、自分の視覚を頼りにしてしまう。そうすると、身体が感じていることが消えて、視覚→判断が優先する。
つまり、自分自身の長年のクセとの勝負ということになる。

これは「身体を意識から解放する」という命題の第一歩だが、それがまた難しい。
こちらから見ていると、明らかに違うのに「合っている」と答える人が多い。
それは、「感じ取る」という作業に慣れていないこともあるし、「違う」ということにも慣れていないからでもある。
いくら「これは稽古だから、ちゃんと白黒の判定をしなさい」と指摘しても、言わない人もいる。
それは、自分が可愛いだけ、つまり、相手から嫌われたくないと子供じみた考えのまま成長していないからだ。
結果、そのことが相手の稽古になっていない、ということなのだが、そのことにも気付かない。
いや、気付けないのかもしれない。

数日前から本部道場で稽古を重ねてきた、シゲヤンや佐藤健大郎は、それらをしっかりと身に付けようと、かなり高いテンションになっていた。
また、佐藤健大郎はワークショップ終了後、昨年来日したヤニスに誘われて、ヨーロッパに 3 ヶ月行くことになっている。
もちろん、向こうではフォーサイスカンパニーでも一緒にワークをこなす。
マーツもスイスに誘っているので、ヤニスとマーツ、そして佐藤でワークショップを開くことになるだろう。
何れにしても、日本人ダンサーがヤニスやマーツのように若くて一流のダンサー達と交流し、腕を磨くのは日本のダンス界にとって、非常に有意義なことだ。

今回のワークショップは、比較的年齢層が高かったように感じる。
その分落ち着いた雰囲気になっていた。
中でも目を引いたのは、 40 代半ばの役者さんだった。
その役者さんとは、ワークを離れて色々な話が出来て良かった。
また、バレエの先生も来てくれていた。
その先生に「どうして私のワークショップは、集まりが悪いのでしょうね」ときくと、「厳しい」という噂があるし、直接聞くこともある、と言ってくれた。
そのバレエの先生の先生は、とても厳しい人だったので、ワークの厳しさは何も苦にならないし、逆にそうでなければ身に付かないと分かっている、とおっしゃっていた。
「若い人は、厳しさに耐えられないのでしょうね」とポツリ。

「即興塾」では、身体の必然的な動きを稽古する。
しかし、このワークになると、いきなり踊りだす人がいるので驚く。
自分の身体を真摯に感じ取れれば、一歩動くのでも大変なことなのだが、それも自分のクセで動いてしまうと、何も分からなくなる。
いわゆるコンテンポラリー的動きをする人がいたり、得体の知れない動きに熱中する人もいる。
どうして、マーツやエイミーはそんなことをしていないというのを見ないのだろうか。
何時もそこが分からない。
何時も私のワークショップに参加してくれる人が「あんな凄い人達と同じ場で稽古出来るなんて、本当に素晴らしいことですね。自分は稽古出来なくても、あの人達を見ているだけで稽古になります」と言っている。
そういう人もいるのだ。
もちろん、皆がそうなってくれることを祈って、ワークショップを開いているのだ。

すぐに深刻になる日本人の中に、エイミーのように明るいアメリカ人がいると、それも少なくなる。
後半は笑いが絶えなかった。
これやなかったらあかんで!

■ 2009/04/25 (土)

ワークショップの初日、やはり、初めて見る顔が沢山。

ということは関西でも、こんなに沢山のダンサーや役者がいるのか、と驚く。
身体塾は、例によって胸骨操作から。
「身体を認知していく」という考え方は、言葉ではその場で理解できるが、実際始めての作業になるので、出来る筈もない。
その為には、刺激を通して、あるいは、バランスの崩れを利用して、でなければそれは出来ない。
自分が身体を動かしてしまったら、身体に対する視点は上の空になる。
少し年長の俳優の方は、「関係性ということばかりを考えて芝居をしてきた」と仰っていた。
そういう方は、その考え方に対して飲み込みが早い。
そして、難しいということをいち早く理解する。
その難しいは、自分の癖や思考がそうではないから、と本質を掴む。
もちろん、それは表現塾で表れる。
「違います」「一人で勝手なことをやっています」 他のメンバーから指摘される。
そこが原点になるのだが、どんな工夫をしていくのかで、進化するかしないかに分かれる。
マーツもエイミーもダメだしばかりされる。
しかし、いっこうにめげない。
その当たりが、日本人とまったく違うところだ。
「じゃあ、こうか」を繰り返す。
このバイタリティが、日本人には少ないし弱い。
ダメだしといっても、レベルが違うダメだしが行われているのだが、それに気づく人はどれほどいるのか。
マーツやエイミー、シゲヤンや佐藤健太郎に対するダメだし。
彼らが出すダメだし。
「最終日まで身体が持つかな」と初参加の人がポツリ。
「大丈夫、あなたが獲得したいと思うなら」

 

■ 2009/04/26 ( 日 ) 2 日目終了

どんどんヒートアップする会場。

「表現塾」には、初参加の人は全員戸惑う。
自分の頭の中にある幻想、あるいは思い込みは、そのまま他人にも見えていると思っているからだ。
ダメだしが出ても、それは、その思い込み方や幻想の持ち方が間違っていると思う。
滅多に、そのものを持つということが間違っている、とは思わない。
それを判定するメンバーも、おかしいの見えるようになっているが、どうしてなのかがわからない。
だから、どんどん小手先の技術の間違いの方向に進む。
もちろん、そんな問題ではないから、そこをいくらいじくってもどうにもならない。
エイミーは、オランダナショナルバレエカンパニーで、 9 年間ソリストを務めていた。
その後フランクフルトバレエ団にいったのだ。
現在は、クラシックバレエの指導者として、ヨーロッパを駆け回っている。
その指導者が、アラベスクを始め様々なバレエテクニックの身体操作法を質問してくる。
私はもちろんその専門的な姿勢をしらないから、動いてもらう。
それを見て、身体のポイントを指摘し、動いて見せる。
「日野はナチョラルダンサーだ」といって盛り上がる。
今、アムステルダムに私を呼ぶ為の方法を模索してくれている。
ヨーロッパで一番ベーシックな、クラシックバレエの身体操作が、胸骨トレーニングから、になるのも時間の問題だろう。
という、夢を見られるようになった。

終了後、大学生がエイミーに質問をした。
クラシックバレエのこと、オーディションのこと。
エイミーやマーツは「諦めずにどんどんチャレンジすることだ」とアドバイス。
それともの凄く重要なことを言っていた。
ダンス界の外から、いくらチャレンジしようとしてもかなりしんどい。
仲間を作って、そのコネや紹介があれば上手くいくことが多いと。
つまり、全ては人間関係で決まる、というようなことだ。
コンクールでもない限り、まずは人間関係なのだ。
それはどの世界でも同じだ。

 

■ 2009/04/27 ( 月 ) 3 日目終了

3 日目終了。

「表現塾」でのジャッジは難しい。
表現の本質と関わりのない細部から、判断しようとするからだ。
もちろん、それは「見る目」が出来ていないから仕方がない。
しかし、それは育てなければ、永久に見ることが出来ない。
その為には、現在の見る目を卒業しなければならない。
その為には、見る目を持っている人の見方を学ぶしかない。
みんなそうして目を獲得してきた。
もちろん、見えない目も自分が獲得したものだ。
それも知らなければ前に進めない。
ワークショップでは、レベルの幅が相当広い。
今回は特に広い。マーツやエイミーが参加しているからだ。
だから、こういった人の成長に関わることが良くわかる。

今日の身体塾には、老舗の料亭の若お上が参加してくれた。
身体のことはともかくとして、そこから関係性に移った時、お上の仕事と同じだと告げた。
つまり、老舗だからこその「気配り」と武道で言う関係性は同じだと。
お客さんが何を欲しているのかを、汲み取るという作業、それが意識の起こりを知り、行動していることと同じだ。
その説明に、何もかも合点がいったようだ。
現場を持ち、そのことに置き換えて考える力を持っている人は飲み込みが早い。
こんな出会いもワークショップならではだ。
しかし、このお上、素直この上ない。
だから身体操作も「難しい」を繰り返してはいるが、どんどん出来ていく。素直バンザイ!

■ 2009/04/29 (水)ワークショップ終了

最終日は、身体塾から盛り上がった。
といっても、毎回復習から入るので、皆が慣れて来たのと、その日が始めての人でもある意味で付いて来られるからだ。
ある意味で、大方の人は量の稽古に慣れていない。
これも不思議な話なのだが仕方が無い。
だから、最近のワークでは量の稽古を入れることにしている。
「胸骨の前後運動、一人 10 カウントで交代」ということで、 30 人いれば 300 回はすることになる。
休憩を挟まず、続いて「胸から肘」という具合に量をやる。
そうすれば、その内カッコウが付くようになってくる。
最終日には「表現塾」は打ち上げの飲み会の為やらない。
だからといっては、何だが表現塾的な要素も随所に入れた。

マーツもエイミーも「早すぎる!」と嘆いていた。
時間が限られている、ということは本当に良いことだ。
日頃の自分のペースと違うペースで進めなければならない。
また、量の稽古にしても、自分のペースでは出来ない。
それも稽古なのだ。
そんなこんなで、あっという間に終わってしまった。

今回のワークショップは来年のヤニス来日に併せて公演をする、その共演者探しの為だった。
今すぐどうにかなる人ではなく、約 6 ヶ月訓練すればどうにかなる、そんな人を探していた。
2 人ほど候補に上がり声をかけておいた。
今夏のワークショップでは決めてしまわなければ、間に合わないだろう。

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