台風に祟られた沖縄だった。
予定していた飛行機が欠航となり、急遽関空に向かい、そこで飛ぶ飛行機を待つことになった。
キジムナー事務局の人が、最悪明朝ということで、その便も抑えてくれた。
昼が過ぎ夕方になる。
無事飛んでいれば、名嘉睦捻さん達と飲むことになっていたのに、きっとパーだろう。
そんなことが頭を駆け巡っていた。
アナウンスを注意深く聞いていると、飛ぶかもしれないという状況に変わってきた。
しかし、我々はキャンセル待ちだから、それに乗れるかどうか分からない。
頻繁に沖縄と電話で状況確認をする。
そんなやりとりの中で、事務局の人が ANA を抑えてくれた。
少しでも早く沖縄に着きたいという気持ちが通じたのか、一応飛ぶということになった。
しかし、現地の天候次第で、関空に引き返すという。
「それもしやないなぁ」
皆覚悟して機内に座った。
キジムナー事務局が抑えてくれた席は、一つグレードが上の席だ。
「やったー」
しかし、色々と資金繰りなど厳しい中での急な出費は、きっと痛いだろう。
こうなると、盛り上がるワークショップにしなければ。
飛行機は無事沖縄上空まで来た。
どんどん高度を下げていく。
それに連れ揺れがひどくなる。
「何でもいいから陸に着いてくれ」
目の前の画面に、滑走路が映し出されていた。
それがひどく揺れている。
大丈夫か?
まるで翼が滑走路に触れるような揺れ方だ。
車輪が着けば何とかなるのだろうか。
この数秒は生きた心地がしなかった。
車輪が滑走路に着くと同時に、まるで悪路を走る車のようなバウンドだ。
それが静まったとき、思わず拍手だ。
「機長さん、ありがとう!」
かくて、無事沖縄に到着した。
「お疲れ様でした」事務局の方が出迎えてくれた。
「ホテルでゆっくりしますか」
「そらあかんで、無事に着陸出来たんやから、祝杯や」
沖縄の初日は泡盛から始まった。
1日目
メロディアスな言葉で、受講者達をリードするアラン先生。
バレエのドミニク先生も、言葉がバレエだったのを思い出した。
「動き」という体操のようなアプローチではなく、あくまでも、その身体内部に湧き上がるエモーショナルなものを強調する。
リリーステクニックの先生を見るのは初めてだ。
アラン先生の受講者の中に、私のワークに参加する人達も混じっていた。
昨年も受講してくれた、若いダンサー達だ。
沖縄初日終了。
ワークが始まる前、一通り皆の顔を見回した。
1 年前の顔が沢山あった。
大人の人達は、 1 年前と変わらないが、ちびっ子達は成長していたので、しばらく分らなかった。
今回の沖縄は、琉球舞踊の競技会と重なってしまっていたので、その筋の大人の人達は残念ながら不参加だ。
その影響か、昨年よりも平均年齢が低くなっていた。
だからか、ワークはスピード感があった。
熱気も中だるみすることなく、最後まで続いていた。
ワークが始まると、ドミニク先生が顔をのぞかせてくれた。
参加する為に来てくれたのだ。
初日の「胸骨トレーニング」には、昨年の参加者も含めやはり全員てこずる。
それは「出来る」を目指すからだ。
この洗脳を解くのは容易なことではない。
「違う、違う、胸全体ではなく、この小さなポイントだけやで」
胸骨からの色々な連動を見せる。
大笑いの中で、身体塾と表現塾を終えた。
夕方前までは、雲が速く流れていたが、夜になるにつれ風も大人しくなっていった。
夜食事をし、階段に座ってコーヒーを飲む。
風が心地よく身体を洗ってくれた。
明日は 2 日目。
2日目
今回の沖縄の面白い点は、東京や四国から大学生がわざわざ参加していることだ。
東京の WS に参加する前に、のぞいておきたかったとのことだ。
四国の大学生は、先日行われた「全日本高校・大学ダンスフェスティバル(神戸)」で特別賞を受賞したという。
両者ともわざわざ参加している分、テンションは高いし貪欲だ。
「感じるのを意識するのですか」
「例えば、冬に水道の栓を回して、冷たい水が出て手にかかった時、『冷たい』と意識しなければ、その冷たいは感じていないでしょうか。巷に溢れている言葉に惑わされた駄目ですよ」
質問のコーナーを設けた時、そういった質問が絶えない。
どうして「意識する」なる言葉を多発するのか。
自分がどういうつもりで、その言葉を使っているのか分っているのだろうか。
そういう突っ込みを自分に入れて欲しいものだ。
今日は身体塾も表現塾も、同調というところに焦点を合わせて行った。
「相手に合わせる」
だから、相手に合わせる、合わせようと思っても、意識してもいけない。禅問答のようなワークだが、ここをクリアしなければどうにもならない。
リリーステクニック(リモンスタイル)のアラン先生が、見学に来られ、興味深げに席を移動して参加者を観察されていた。
参加者はどう間違うか、という話で盛り上がった。
つまり、指導する事の難しさの共有だ。
WS を終えて、北谷へ。アメリカンビレッジにある地球食堂で食事。
少し物足りなかったので、タコスの専門店があるというので、そこでタコスを。これは美味しかった。
1 人前 500 円で、小さめのタコスが 4 個。
店の名前は「メキシコ」だ。
沖縄でタコス!?
3日目
ワークショップを終え、キジムナーフェスタ会場へ。
野外特設テントでは、カンボジアの若者達によるサーカスの最終日の公演が行われていた。
このサーカスは以前 TV ドキュメンタリーで紹介されたので知っていたのだ。
サーカスの技術ということだけで言えば、もっと最先端のものが世界中に沢山あるし、卓越した技術を誇るカンパニーも沢山ある。
しかし、どこにもこのカンボジアサーカスのような、荒っぽいエネルギーは無い。
徹底的に観客に向う、そのエネルギーが凄い。
というのも舞台は、生活と直結しているからだ。
好きだからサーカスを、好きだからダンスを、というのではなく、生活をしていく為のものだからだ。
手拍子も、拍手も自然に惜しみなく出てくる。
思わず胸が熱くなった。
そこには、彼等が裸のままいたからだ。
この荒っぽいエネルギーを、ハングリー精神と置き換えられる。その意味では、何とはなくでも食事にも寝るところにも、学校にも、さほど不自由がない文明国からは消えて久しい。
しかし、こと日本は本当に豊かなのだろうか。
衣食たっているということが豊なのだろうか。
そんなことを考える、感性を削ぎ落とされてしまっている日本のどこが豊かなのか。
そんなことを考えさせられただけでも、沖縄に来たかいがあったというものだ。
ワークショップは、参加者のほとんどがエネルギーを出し切り、笑顔のうちに終えた。
表現塾では、正面向かい合いを重点的にやったので、皆の目がキラキラしていた。
アイコンタクトゲームは、最初は誤解だらけでうまくいかなかった。
しかし、様々な正面向かい合いや、「ナマムギ合戦」を繰り返す程、そのゲームは完成度を増していった。
「こんなルールの単純なものでも、目だけで理解しあうのは難しいやろ。それは体験したように、相手に伝えようというエネルギーが決定的に低い、ということやで。日常は絶対に省エネにならないようにね」
沖縄でモデルの仕事をし、役者を目指している女性や、東京から来た学生、昨年も参加してくれた青年。
少数だが、熱のある楽しい楽しい打ち上げだった。
深夜 3 時まで泡盛で盛り上がりバタンキュー。
しかし、今回の沖縄は台風になつかれたものになった。
行きは台風 8 号、帰りは台風 9 号。 |