2009 Geneva

パリの飛行場からタクシーに乗り、リヨン駅へ向かった。
タクシーの運ちゃんに「リヨン駅へ」というと「パリか?」と聞かれた。
そうかリヨン市もあった。
「もちろん、パリだ」
飛行場からパリ市内までは 40 分くらいで着く…筈だ。
それは道路事情による。何しろパリの道路は無茶苦茶だからだ。
1 車線の道路でも、 2 台平行して走るし、少し車間が広いと、いくらでも割り込んでくる。
という運転手がひしめき合い、尚且つ、交差点での区分が定かではない。
だから、始終渋滞しているのがパリだ。
これは、今年に入って 3 回もパリに行っているおかげで体験したことだ。

タクシーは案の定約 1 時間程でリヨン駅に着いた。
とは言っても、スイスジュネーブまでの TGV の時間には 2 時間 30 分もある。
とりあえず、煙草の吸えるカフェでねばることにした。
リヨン駅正面に接したカフェだ。
日本を発つ時、こちらはきっと冬だろうからと、厚着をしてきて正解だった。
しかし、夕方になり日が陰ってくると、どんどん底冷えがきつくなってくる。

何とか列車の時間までねばりチケットに明記してある車両に乗り込む。
「ここはパリだから、列車が発車するまでは本当に荷物に注意してください」
武道ワークショップの主催者に、言われた言葉が頭にあったので、バッグを二つ鎖でつなぎ、その鎖を荷台に通し鍵をする。
まるで自転車の防犯対策だ。
夜の列車の旅は味気ない。
車窓は真っ暗で何も見えない。
1 時間ほどして列車は、最初の停車駅に着いた。
隣の座席に座っていたビジネスマンが、荷物を置いたままドアの方に行く。
何をするのかな、と思い視線で追った。
ドアが開くと外に出た。
まさか売店があるわけで無し。
つい好奇心でドアの向こうをのぞくと、なんと煙草休憩だった。
そうか、プラットフォームは煙草を吸って良いんだ!
ズボンのポケットから煙草を取り出し、並んで一服。
そのビジネスマンと目が合った。
「しやないなぁ」という感じのアイコンタクト。
車掌がホームを見渡しているので、発車だろうとおもい車内へ。
そんなことを 2.3 回繰り返す内に列車はジュネーブに到着。
そのビジネスマンに日本から持ってきた煙草をプレゼント。
日本の煙草はパッケージがおしゃれだから、煙草を吸わない人まで欲しがる。
そういえば入管はどこにあるのだろう?
以前、ベルギーの方からフランスに入る時、車内に入管が回って来た。
今回は?と思っているうちにジュネーブのホームに到着してしまった。
出口は?と探したが見当たらない。
エスカレーターが目に付いたので、トランクを転がしながら降りる。
何とそこが簡易な入管になっていた。
しかし、職員は別段パスポートをチェックするでもなく、仲間と談笑していた。
そのままトランクを転がし外へ。

「 hino 〜〜〜」マーツだ!
マーツが迎えに来てくれていた。
午後 11 時ジュネーブでマーツと再会。
マーツのお母さんが運転する車に乗り、ご両親の家に。
マンションの 3 階で、日本風に言えば 4LDK だ。
「広いですね」
リビングが 30 畳程あるだろうか。
「とりあえず、今は疲れているだろうから寝てください」
通されたのは、ビジネスホテルのダブルルームより広めの、小奇麗な部屋だ。
とにかく寝よう。
明日は朝マーツが来てくれることになっている。

■ 2009/10/31 ( 土 ) 寒い
案の定時差ボケ。
こちらの、 4 時に目が覚めたが、何とか無理をして少し寝る。
それでも目が覚めてしまうから、ベッドの上でゴロゴロするしかない。
コーヒーの香りがするのでリビングに行くと、パンとジュースの食事を用意してくれていた。
「おはようございます」
本当に気遣いをしてくれるお母さんだ。私達に気を遣わせまいと、食事中はダイニングでご主人と二人だけで食事をとってくれる。

「今日は、ジュネーブ観光をしよう、どうするジュネーブの街は狭いから歩けるけど、バスやトラムもあるよ」
「じゃあ、時差ぼけを無くする為に歩こう」
どこをどう歩いているのか分からないが、とにかく公園から市街地を歩いた。
旧市街やレマン湖、美味しいレストラン、スイスでも特別なチョコレートを作るお菓子屋。
しかし、しかし、どうしてこんなに美しいのか。
ゴミが落ちていない。
煙草の吸殻も探さなければ見当たらない。
レマン湖の透明度は抜群だ。
観光地でありながら、ゴミが浮いていないのだ。
やっと、コーラの缶を一つ見つけたくらいだ。
パリとは大違いのきれいさだ。
トイレも当然美しい。色々な店の人も、愛想が良くて気持ちが良い。
とにかく歩いた。
しかし、身体がボケているから、疲れもさほど感じない。
これで今日は、少しくらい眠れるだろうか。
夕方からマーツは、キッズの為のバレエクラスの指導に行く。
そして、今日は飛行機でエイミーが着く。
それをお母さんが迎えに行き、夜 8 時から食事ということになっている。

エイミーが到着。途端に賑やかになる。
明日からのワークショップの話で盛り上がる。
食事の時、ビールを飲んだばかりに、意識が朦朧としてくる。とにかく寝るか。
明日は、 10 時スタートなので朝 8 時起床だ。
バスタブがあるのが有難い。
バスタブに湯をはって、身体を温めて寝よう。
完全に冬状態のジュネーブは、とにかく寒い。

■ワークショップ

スイス人は保守的で、何か新しいことに取り組むということをしない人が大半らしい。
しかも、お金を払ってまで習うということをしないそうだ。
単純に言えば「徹底したケチ」なのだそうだ。
その精で、集まりが悪い。
お母さんが「マーツには勉強になったことだと思う」と言っていた。
そんな中で、ブラジル系のダンスの先生が、私のワークをえらい気に入っていた。
もちろん、何も出来ないのだが、ダンスにとって絶対に必用だと散々言っていた。
カンパニーで呼びたいとも。
私のワークを一番長く受けているマーツ、そしてエイミー、今年からの付き合いになっているラファエロ。
しかし、その誰もが自分のものにしてやろうと思っている。
サーカスのラファエロは、 13 歳から世界ツアーに出ているので、プロとしての経歴も長い。
長いが故に、仕事に対してのモチベーションが下がってきた時期に、私のワークと出会った。
それを体験した瞬間、新たなモチベーションが生まれたと言う。
ワークを受けた後の舞台は、まるで違う世界だったそうだ。
だから、絶対に私のメソッドを必要だと言う。
その言葉通り、今夏には東京のWSにも参加したし、来月のパリにも仕事中にも関わらず来るという。
といった、モチベーションの高い人が数人いると、初めて取り組む人は本当に戸惑う。
感性の鈍い人は、絶対について来れなくなり、すぐに座り込んでしまう。
その辺りは、日本人よりも諦めが早いし、それを如実に表に出す。
そういった態度を見れるのも外国ならでわだ。

■ 2009/11/03 ( 火 ) ジュネーブ

日曜日は、スーパーマーケットをはじめ、商店が全部休みだ。
その代わり、公園の横では日本でいう屋台が沢山出ている。
そこで、得体の知れないピザを買い、昼食代わりにした。ジュネーブの街は、どこを歩いても美しい。公園も本当にきれいに整備されている。

駅のトイレも、カフェのトイレもきれいだから、基本的な清潔意識が高いのだろう。
晴れている日は、モンブランが見えるという。
しかし、それが見えなければ、街並みはパリもフランクフルトもバルセロナも変わらないから、どこを歩いているのか分らなくなる。
昨晩は、パリから大城さんが、通訳をする為にジュネーブに来てくれた。
昨日までは、ロンドンから参加している日本のダンサーや、ジュネーブ在住の日本のダンサーが通訳をしてくれていた。
しかし、直訳は出来ても、私の話す言葉の背景を知らないし、年齢的なものもあり、かなり苦労していた。
何時もの事だがそれを見ていると、日本で言葉が通じないというのは当たり前だと、つくづく感じる。

今日は、エイミーの誕生日だ。
マーツのお母さんが、スイスの料理と手作りのケーキをご馳走してくれた。
明日は、エイミーのクリエーションを見て、そのアドバイスを頼まれている。
今日は雨が降っていたが、雲の合間から雪がチラホラと積もった山が見えた。
やっと、スイスらしい風景に出会った。
ワークショップは人数が少ない分、かなり密度の濃い時間になっている。
午後からのクラスの中ほどになると、皆ダウンして床に座り込んでしまっている。
参加者は一様に筋肉痛を訴えている。
それは仕方が無い。
何しろ、初めてのワークなのだから。

■ 2009/11/04 ( 水 ) ジュネーブ

残すところ、後 1 日。
ジュネーブのワークも、笑いの内にあっという間に終わる。
昼食の後数人でカフェへ。

私はここジュネーブでも「ノー」を連発している。
話はその駄目出しの事になり、日本では駄目は当たり前のこと、というよりも、稽古ということでは駄目は付いて回るものだ。
それは、成長をしていくための道程だ。
駄目なものは駄目。
「だから工夫をしろ、同じ取り組み方をするな、それ以外の工夫をしろ」
が駄目の内容だ。
「イエス」というのは、もう成長のノリシロは残っていない、ということの一つだ。
文化によって、「イエス・ノー」も違うものだと皆は頷いていた。
そんな話が出来るのも、大城さんが通訳として付いていてくれているからだ。
サーカスのラファエロは、ワークが終わると即本番が待っている。
フランスのリヨンだ。
だから、その本番の合間を縫って、日帰りでパリにも来るという。

■ 2009/11/05 ( 木 ) ジュネーブ終了

何だかんだといっても、受講者の国籍が多彩なことが面白い。
それぞれ文化が違うから、取り組み方も違う。
それらを見るのは勉強になる。
ブラジル、ベトナム、アメリカ、スイス、フランス、中国、等が主だ。
しかし、一様に「正面向かい合い」が好きだ。
初めは戸惑っているが、どんどん深く入っていく。
同じ正面でも、テリトリーを感じる正面や、感じて動く正面、意識が動いた時に動く正面。
今日は最後だから、これらのことを全部並べてやってみた。
その中で、足の運びや手の運びのトレーニングも入れた。足や手の運びの様に、一人で出来る稽古は、得てして評判がよい。
休憩時間を惜しんで、覚えておこうと一生懸命に取り組んでいる。
その姿は、当然今日が一番多い。
明日は、モンブランではないが、山と湖の観光に朝から出る。
しかし、雨模様だ。

■ 2009/11/06 ( 金 ) アルプスの少女ハイジ

「アルプスの少女ハイジ」の世界へ行った。
しかし、マーツにしろエイミーにしろ、マーツのお母さんにしろ、日本のアニメ「アルプスの少女ハイジ」をよく知っていたのには驚いた。
フォーサイスカンパニーでも、シリルなどが日本のアニメオタクで、ガンダムなど本当に詳しかった。
現代日本で世界に通用する文化は、それこそアニメだ。
エイミーが、山に行ったら「サウンド・オブ・ミュージック」を歌わなければ駄目だ、と、ドレミの歌を大合唱。
途中、モントルージャズフェスティバルの開催地を通り、 CHILLON 城を見学。
ここは、 1968 年頃だったか、「モントルーのビル・エバンス」のレコードジャケットになっていた城だった。
ジャック・デ・ジョネットがビル・エバンスと?という興味と、エバンスの演奏のノリを研究するために、嫌と言うほどこのレコードは聞き込んだ。
城壁を眺めながらそんなことを思い出した。

そこから一挙に山を上がり、「アルプスの少女ハイジ」の世界へ。
雪を被った頂上から、みどりがある草原、スキー用のロープウエイ。
不思議なことに、始めて外国を体験した感じがした。
何時も、どの国に行っても精々中心から少し離れた郊外くらいにしかいかない。
だから、その辺りまでは、ピンとこなかったが、山に上がり、日本では全く知らない世界を目の当たりにしたら、外国なんだな、と改めて感じた。
距離感も狂う大自然、草原。
まるで写真だ。
あるいは舞台の書割だ。
とにかく、どうしても現実感がない。
ピンとこないのだ。
もちろん、レマン湖の透明度にも驚いた。
これほどの観光地なのに、ゴミが一つも浮いていないばかりか、そのおかげで湖岸からは、完全に湖底が見える。
どういった教育が、こんな美しい街を作るのだろうか。

明日はジュネーブ最後の日になる。
フランス側のモンブランにドライブだ。
フランスだから国境を越える。
パスポートがいるかもしれないらしい。
それも初めての体験になるから楽しみだ。

■ 2009/11/07 ( 土 ) モンブラン

モンブラン。
ふもとのシャモニー。
全く縁の無い場所なのだが、その圧倒的な自然に言葉はなかった。
ジュネーブから数分走ると、そこはフランスとの国境だった。
国境だからといって何かあるのではない。
それも拍子抜けだが、何も無いに越した事は無い。
約 40 分高速道路を飛ばすと、いきなりこの自然が目の前に飛び込んで来た。
全員「ワー!!!」と一斉に声を出した。
マーツやお母さんら地元の人でも、くっきりと見えるモンブランはたまにしか見られないらしい。
それを、モンブランを見に行って、見ることが出来るというのは、偶然も偶然、殆ど奇跡に近いらしい。
お母さんが、
「今日のニュースでモンブランの高さが 40 数センチ低くなったと言っていた」
という。
もちろん、氷河が溶けているということだ。
こういった自然を身近に持つ人は、温暖化現象を直接感じ、危機感を持っているのだと思った。
シャモニーの街は、シーズンになると人で満員になるそうだ。
街を歩いていると、日本の温泉街のような雰囲気がある。
ロッジは全部木造だからか。それとも小さな川が流れているからだろうか。
いずれにしても、モンブランの麓で、ただただタメ息をつくばかりだった。
しかし、コーラが 440 円とは恐れ入る。
バスは片道 300 円。
消費税は 7 %だからそう高くも無い。
それ以外の色々な税金が付いているのだろう。
色々と見て回ったら、日本のおよそ倍から 3 倍という感じだ。
もちろん、日本と同じくらいのもの、安いものもあるが、比較的高い。
今日は、ジュネーブ最後の夜になる。
マーツやご両親、友達などで日本食レストランへ。
「高い!」
料理はまずくはないが、これで5.000円以上はないだろう。
とんかつ定食の値段だ。

明日は昼過ぎにパリへ向う。
日曜日は、朝 9 時からワークショップだ。

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