2015 新春のパリ・ブレスト・ブリュッセル・マルセイユ

1月17日

パリには現地の午後3時30分に到着。
飛行機もそうだったけど、パリの空港が閑散としているのに驚いた。
テロ事件の直ぐ後だから、ツアー客などが殆どキャンセルしたらしい。
レオさんによると、今日も10分程前に郵便局に立てこもりのような事件があったそうだ。
警官が突入して解決しているそうだ。
ホテルは何でも70%の客からキャンセルが出ているという。
百貨店もガラガラ。
街には警備の人や軍隊、警官、パトカーが走り回っている。
何時もワークショップをする郊外の体育館の近くが、人質を取り立てこもったスーパーがあるところだ。
こうもリアルに外国を体験できるとは、ついているのかいないのか、良く分からない。

朝7時、珈琲を飲みに、一階にあるレストランへ行った。
何時もは、この時間になると超満員なのに、私一人しか客はいなかった。
しばらくすると、老夫婦と若者2人。
ホテル客の殆どがキャンセルしているのが分かる。

後1時間でレオさんが迎えに来る。
リヨンの居合いの先生から「楽しみにしている」とメールが入った。
マルセイユからもフランスで活躍する日本人のオペラの歌手が来る。
彼女は、マルセイユでのワークショップ時には、仕事で移動らしく、受講できないのでパリに来てくれる事になっている。
パリのワークショップは、ほんとに色々な職業、色々な人種、色々な宗教の人が受講する。
みんなが混じって仲良く稽古をしてくれる姿は美しい。

今年の初めは足から入ろう。

「足を出すな、足は上半身に連られて動くものだ」と何時も話す。
しかし、上半身というのは、一つの比喩で、自分の持つ目的意識や生理的反射、無意識的反応のことである。
それらの目に見えない、また頭に上がらない意識で動くのだが、その時身体全体が動くように、上半身と説明しているのだ。
体重が乗っている足の膝関節を緩める事で動き出すのだが、もう片方の足の股関節を緩め膝関節も緩める。
そうすると、自然と足が連られて動く。
私の稽古の難しいところはここである。
無意識的に動く事を、意識的にやり、それを習慣化させるようにしなければならないところである。
しかし、身体を違うシステムで、また、身体として自然な姿に復元しようとすれば、このやり方しかないのだ。

蓋を開けると驚くほど沢山の受講者がいた。
事件の後だから、相当少ないと覚悟していたのだが、そんな事は意に介さず、という感じだ。
さすがフランス人。
とりあえず、股関節からだったが出来ないので、肘になり、最後は相手との接点である手の平だけの稽古になった。
「コンタクト」とみんな言葉にはするが、それが一体どういうものかが、全く分かっていないので、そこを徹底的に稽古した。
それは「触れる・感じる」というこれまた最重要事項になるので難しいのだが、言っていても始まらないので、そこを徹底した。
マルセイユからも、パリから1000km離れたところから来たという人まで、何時ものように彼方此方から来てくれている。
心筋梗塞で倒れていた人も参加してくれている。
ほんと何でもありだ。

やはり、道場にはパリ警察の人はいなかった。
これから、夕方からの稽古だ。
朝の稽古よりも人数が多いかもしれない。ジワーッと増えてくれているのが主催者にとっても何よりだ。
何時も映像を撮ってくれる人が、プロ仕様のカメラに変えたそうだ。
私を撮る為にというから、無茶苦茶嬉しくなる。


1月18日

夕方のパリは、最近ずっと使っている学校の中の武道場だった。
ここでのワークは、パリ市内に住む人達が沢山集まる。
やはり、60人以上はいたかもしれない。
少しだけ初めての人がいたので、胸骨や背骨の話から、座っての蹴りを久しぶりにした。
胸骨と肘の連関が上手くいかないので、腕のねじれを復習。肩から肘の連関は、もっとも基本的なものだから、そこも集中的に稽古をした。
そこから接点である手の平の使い方。

「難しいでしょう?でもね誰でも出来るようなことをして面白いですか?誰も出来ないような事が出来るようになる方が楽しいでしょう?」

で締めくくった。


どうもPCの調子が悪い。
1時間も使っている触れないくらい熱くなり、音と共にシャットダウンする。
ブラックアウトするのだ。
だから、1時間ほどで、先に電源を切り冷ますようにしている。
文字の変換も思い切り遅くなっている。
今から朝食で、パリ二日目が始まる。

1月19日

あっという間にパリは終わった。
「週末はマルセイユへ行くからね」と、10人くらいとその声で別れた。
パリ警察の生徒は、「どうしてもワークに出たいから、緊急時は電話を鳴らせ」ということで許可を取り参加してくれていた。
彼らは家族を狙われているから、そちらにも注意を向けなければいけないので大変だという。
しかし、警官の奥さん、家族というのは、そういった危機管理は当たり前の事だそうだ。
だから、彼の奥さんも十分理解していて、日々注意しているという。
日本の警察では、きっとそんなことは無いのだろう。

朝は手の握られているところを感じ、そこを辿る。
から始まり、足使いから体重移動で倒す。
打撃系の為に、そこに三角を組み込んだ組み手で遊んだ。
昼からは、体育館に暖房が入らなく寒い。
で暴れられる稽古をしようということで、座った状態からの、突きの攻撃に対しての足捌きだ。
挙句の果ては胴締めや聴剄へと進んだ。

夜の食事は、バンドーム広場の近くにある有名な寿司屋へいった。
そこにはシャネルのトップのデザイナーが来ていた。
きっと高級寿司なのだろう。
しかし、この地区はパリらしくない。
というのは、ピカピカの高級自動車が沢山止まっているからだ。
ほこりまみれで、ボコボコの車がパリには似合っている。
昨日は、食事を終えホテルに戻ると、急に睡魔に襲われたので、そのまま寝た。今日の朝は7時前まで目が醒めなかったので、今日は快調だ。

午後から列車でフランス西部の街ブレストへ。

1月20日

モンパルナス駅。
ここからブレストまで列車の旅だ。
午後2時過ぎに乗車。
ブレストには午後6時30分。
約4時間30分だった。
車窓の何と退屈なことか。
延々と続く牧草地帯。
そんな姿を見る度に、フランスは農業国だと改めて認識する。

ブレストに着いたその足で、道場に向かう。
少し少なめの20人そこそこだ。
パリで少し少なめの80人とは一寸違う。
空手の先生、柔道の先生、色々な武術の人達がそろっていたので、少ないが楽しめた。
2/3は初めてだ。
そこで、胸骨操作から説明。
こういった説明は重ねる程に練られていくので、私にとっては相当の勉強になる。
胸骨と腕の接続。そこからくる腕の強度。
足を突っ張らない強さ。
胸骨と肘で引っ張る動作。
もちろん、そこには肘という難関があるから、肘だけを取り出す。
肘だけを操り、腕をきつく握られているのを下に下げる。
初めて参加する女性に、歌でも歌ってやることを忘れて下さいと指示をだすと、面白いように出来た。
大きな男性二人がその女性の片腕をしっかり握っても、軽々と成功させ皆から拍手をもらっていた。
つまり、意識をどう使うのかが、大事な問題であって、身体運動そのものをどうするのかは二の次で良いのだ。
もちろん、それはそういう事を認識する為のもので、決して武術として出来ているのではない。

しかし、出来る体験を持つ事が大事なことだから、初心者はこれで良いのだ。

片手両手持ちで体重が移動し、体重が力になるという稽古に続け、それの二人持ちまでいった。
パリからも数人参加してくれていた。
夜10時稽古を終え食事。寝たのは深夜1時を回っていた。

背骨を順に感じる 意識を替えると対立しない

 

今日は寝られなかった。
時差ぼけだから変な具合でそうなる。
ここブレストは、年齢層が高い。
若い人もいるが、30歳代から上だ。
今回は女性の素直さが目立った。
どの会場でもまずは女性が出来るようになる。
男性は直ぐに迷子になり、途方に暮れる事が多い。
自分の考え方を当てはめてしまうからだ。
直感的にではなく、自分の考えなりにやる、だから絶対に迷子になるのだ。

1月21日

雨上がりの朝の匂いが身体に心地よい。
昨日はこちらに来て初めての本格的な雨だった。
にもかかわらず、合計50名を越す人達が受講してくれていた。
しかも大半が初めての人達だ。
ということは、前回は完全に頭がヒートしてしまって、今回は見送った人達が沢山いるということである。
これも仕方のない事だ。

今日は、7時45分に迎えが来て、そのまま4時間30分でパリ。
東駅か北駅に直行しブリュッセルだ。
列車でプチヨーロッパ横断である。
まあ、とにかく寝てしまうだろう。

ワークショップの最後にいつも質問コーナーを設けている。
「背骨を使うワークをしましたが、これは技になるのですか?」
パリなら「小学校へ行き直しなさい」となるのだが、こちらでは「背骨が動くようになったら、自然と使えます。それまで相当時間はかかりますが」となる。
片手片手取りから、両手取り。
それを使った投げ。
首に仕掛けられた攻撃からの返し。
背骨を感じる。後ろから支える。
腕を持たれて、背骨で投げ。
羽交い締めからの脱出。
結構バラエティに富んだメニューだった。
皆の笑顔が絶えなかったのが、何よりだ。

1月22日

北駅の駅前のレストランで、軽い昼食をとりそのままTGVでブリュッセルに着いた。

パリよりもこちらの方が危ないそうだ。
だから、パリと同じように軒並み売上が落ちているそうだ。
今はセールの時期なのだが、それでも客は来ないという。
なるほど、駅前のホテルから道場までの間で、兵士や警官が機関銃を手に巡回しているのが目立った。

稽古は、初めての人が多かったので、またまた胸骨から、体重移動までの定番をやった。
後半は身体の動きで流れを作り、相手を投げ飛ばすにチャレンジした。
投げになると、やはり大方の人は「投げ」になる。
相手の腕を擦るだけというのは、全く出来ない。
つまり、身体を動かしているのは頭だからだ。
潜在意識の中に「投げる」が刷り込まれているから、チョットやそっとでは出来ないのだ。
身体の間違いを正す必要はない。
考え方を変えたら良いだけだ。
というは易しなのだが、ほんとは高い壁である。

しかし、こんな中途半端な曜日に、よく受講してくれると感心する。
パリからも二人受講しに来ていた。
ありがたいことだ。

今日も睡魔がどんどん襲って来るので、もう寝てしまおう。
寝ようとしたが、道着をきれいにしたくてフロントへ持っていった。
大方のホテルの場合、朝早く出すと夕方には出来ている。
このホテルもてっきりそれと同じだと思って、そのつもりで会話を交わすが、話が全く噛み合わない。
もちろん、私の英語が大阪弁で無茶苦茶だし、理解力は皆無で殆ど直感で話すからである。
フロントマンは若い男性だ。
すったもんだの末やっと話が通じると、クリーニングは夕方に出来るのではなく次の日の朝だということがわかった。
それでは明日の稽古に間に合うはずもないので断った。
すると、その若いホテルマンが「どうしても洗濯をしたいのか」と言うから、そうだと答えた。
すると、ホテルの従業員が使う、真新しい部屋へ案内してくれ、そこに備え付けてあった洗濯機に道着を放り込み「1時間で洗えるから、その後乾燥機にかけるといいよ」何と親切なベルギー人だ。
ビッグサンキューの深夜だった。
おかげできれいな道着で稽古が出来る。

1月24日

マルセイユには約2時間30分かな、で到着。

まずは、一服とプラットホームに降りたら、直ぐにパリから参加の5人が迎えてくれた。
何だか勘が狂う。
「また、同じ顔か!」とみんなで大笑い。

夜の稽古は、何故か体育館の鍵が開かなくて、ファリドの部屋で稽古になった。
「マルセイユだ」と誰も不平を言わない。
ヘイショウセンの縦系の連動から四股足立ちになる。
そのことで、相手は倒れている、という稽古を小さい動きで行った。

今日は、朝から良い天気だ。
太陽が燦々と輝いているので、外で稽古をしようということになった。
実は主催者が場所を撮り忘れたのだ!有り得ない!マルセイユだ!!
しかし、いくら太陽が輝いていても、1月だ、寒いのには変わりはない。
でも、皆は伸び伸びと稽古に励んだ。
芝生が前日の雨で湿っているので、投げることが出来ない。
だから、その手前までのことで汗を流した。

分相の足と腕の使い方、胸骨操作だけで、相当汗をかいた。
公園だから、あちこちで運動をしている姿がある。
太極拳や得体のしれない武術のような、分からないが、みんな黙々とやっていた。
お昼ごろには太陽が陰ってきたので、良いタイミングで昼食になった。

マルセイユ 屋外で

1月26日

夕方5時30分、マドリッドでのワークショップは無事終了。
各クラス60名以上の人達が受講してくれていた。
皆名残惜しそうに、それぞれが別れを言い合っている。
こんな光景を見ていると嬉しくなる。
私のワークショップを通して、全く知らない人達が知り合い、そして友達になっていく。それぞれがそれぞれを尊重し合えるようになっていく。
これこそがワークショップの目的だ。
頑固な先生も二日目は驚くほど素直になっていた。
「どうして?」という感じだ。
そういう、ちょっと問題かな、と思われる人も二日目は、組んだ人と仲良く出来るようになっている。
ほんとに素晴らしい時間だ。

7時出発のパリ行の列車に間に合うように、急いで駅へ行った。
パリから来ているエルビスも同じ列車だ。
嬉しい事に私の二等の席と、自分の一等の席を替えてくれた。
お陰で、パリまでの間少しだが寝ることが出来た。
レオさんがリヨン駅まで迎えに来てくれ、そのままホテルへ。

ここでまた、「どうして?」という嬉しい事が待っていた。
シャワーを浴びる前に、一服しようと外に出た。
ホテルのセキュリティの人も出てきて「たばこを一本くれないか(フランスでは普通・日本でも50年前は日常的だった)」というので、私のたばこを一本あげ、何となく世間話をしていた。
「どうだい、コーヒーを飲むか?」というので、レストランもバーも閉まっているのにと思いながらも流れで「欲しい」と言った。
彼はレストランに入っていき、私の分のコーヒーを入れて持って来てくれた。
「ありがとう」と思わず声が出た。
今回は、ブリュッセルでのホテルのフロントマンや、エルビスの親切。
このセキュリティの人の思わぬ親切に感動した。
「ありがとうのこころ」を、もっと大切に、そして、きちんと相手に言おうと思った旅だった。

帰国のフライトまで十分に時間があったので、レオさん達とレストランへランチに行った。
セーヌ川を挟んで、ルーブル美術館の前にある小奇麗なレストランだった。
食事を終え、レオさんが5月に行う演武会の会場を下見に行くことになった。
そこは、モーツアルトがパリで演奏する時に使っていた、一番古い劇場だそうだ。
中に入ると、木造らしくあちこちが歪み、強烈な雰囲気を醸し出していた。

テアトルDejazet テアトルDejazet


1月28日

1月のパリ・ブリュッセル・ブレスト・マルセイユのワークショップを終え昨日帰国した。
何だかやけに疲労感がある。きっと、長時間の列車の移動がたたったのだろう。
パリからブレストの4時間30分の往復、そこから1時間30分程のブリュッセル迄の旅。
また、ブリュッセルからマルセイユ迄の4時間30分の旅。
これらの疲労だと思う。
現地でのワークショップは、気持の良い人反応の良い人が多いので、これは楽しくて疲れない。
何時ものことだが、毎回「もう終わり?」という感じになった。

逆に東京に付いた途端に、自然にイライラした。
ロボットのように、無表情無感情の人が多いからだ。
私のスーツケースにぶつかっておいて、振り返ったおっさん。
うっとしそうな顔に「何や、お前喧嘩打っているんか」と思わず口からでそうになった。
パリでもブリュッセルでもそんな場面はある。
しかし、一寸ぶつかりそうになると「Pardon」と言葉が飛び交う。
それは、日本人なら当たり前の事だと思うのだが。
最近では中国からの旅行者が多い。
その中国の人でも「すみません」と片言の日本語で謝る人を見かける。
しかし、その気配もないおっさんに「こいつはアホか」と突っ込みそうになった。

外国の人は自分の主張を徹底的にする。
それも良し悪しはあるが、主張するからこそ、そういった場面ではきちんと言葉が出るのだろう。
だから、外国ではエレベーターに乗っていても気分が良い。
一寸した時間でも世間話が出るからだ。
どうしてこうも、頑なな人間が日本では増えてしまったのだろう。
そういう風に生きていて楽しいのだろうか。
たかだか数十年の人生しか無いのに、と思わずにはいられない。

 

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