2015年 Forsythe Company でのワークショップ

2014年の秋、メールが届いた。Forsythe Companyのファブリズからだった。
カンパニーが来年の6月に解散するから、最後にどうしても日野にワークショップを開いて欲しい。自分が最後の作品を任されているから。と。
何とも有り難い、そして名誉なオファーだった。
もちろん、一も二も無く快諾した。それから日程の詰めに入り、2015年2月16日から24日まで2年ぶりのワークショップになったものだ。

(私のブログ「さむらいなこころ」に掲載したものに、少し手を加えまとめたものです)

2015/2/17「ユーロは高いな」  

時差ボケで5時に目が覚めた。
2時に寝たから、3時間の睡眠。
仕方がないからゴロゴロ。
パン屋の空く時間まで待って朝食を買った。
4,70ユーロは高いで。

「冬のフランクフルト」  

機内から見るフランクフルトの空は、どんよりとして雪のような感じで寒そうだ。
この時期にフランクフルトへは来たことが無い。
何時もは4月か5月のメッセがある時期で、ホテルが超満員の時だ。
この時は、ホテルの値段が倍にも三倍にも跳ね上がる。
今回の宿泊はアパートで、しかも安藤洋子さんのアパートの真裏だった。
アパートには苦い思い出がある。
アムステルダムでの初めてのワークショップの時がアパートだった。
水がチョロチョロしかでない、暖房が効かなくて寒い、会場から遠い。
とにかく、「何じゃここは!」だった。
しかし、ファブリズが用意してくれたアパートは、バスタブも完備で一般的な広さが有り、清潔な感じでゆったり出来る感じだった。
「日野にはバスタブが必要」というのを覚えていてくれたのだ。

荷物を受け取り外に出ようとしたら、警備の警官と目があった。
何か言うやろな、と思ったら、案の定「タバコは何箱持っていますか」と来た。
「ワンカートンですよ」「他にありませんか」「バッグを開けましょうか?」「いいです、じゃあ、お金は10,000ユーロ以上持ってますか」「ハア〜?お金」
私は財布を出し、中を見せた。
「どうぞ」やて。何のこっちゃ。

ファブリズの迎えを待つが、ボケた頭は回転しない。
ボケーッとしながら、とりあえず一服しに外へ。
しばらく行き交う人を眺め、行き慣れたパリとは違う雰囲気に浸った。
ファブリズが到着し、再会を共に喜んだ。
早速タクシーを飛ばし宿舎のアパートへ直行。
夕飯はベトナム料理だ。
ファブリズとビールで乾杯していると、安藤さんが到着!
「久しぶりです、今回もお世話になります、よろしくお願いします」
安藤さんも合流し、明日からのワークショップの打ち合わせをした。
シリルもティルマンも参加するという。
アンデルはNDTのコーチになっているから、今回は参加できない。
その事を相当悔しがっていたとファブリズが笑っていた。

彼らは皆オフになった時は、色々なカンパニーに呼ばれたり、独自のワークショップを開いている。
そこでは、私のワークを展開しているから、ヨーロッパでは「胸骨」や「意識」という言葉は、ダンサー達に定着している。
そんな彼らから、もう少し深いところを教えて欲しいとの要望もある。
「いくらでも教えるから、どんどん質問しろよ」とファブリズに言っておいた。
10時過ぎ部屋に帰る。
アパートにはバスがあるから、それだけで満足だ。
私のリクエストに応えてくれたのだ。

まずバスに浸かり、身体を温めて寝よう。
寝、明日は10時30分過ぎ安藤さんが迎えに来てくれる。

あかん!時差ボケ、朝5時に起きてしまった!!

フランクフルトのアパート

 

2015/2/18「ここが私の原点だった」  

朝10時30分過ぎ、安藤さんと連れ立ってスタジオへ向かった。
中に入るとファブリズがセッティングをしていた。
シリルがティルマンが顔を見せ、再会を喜び合った。
ヨネも遅れて来た。
一昨年安藤さんと京都でパフォーマンスをしたライリーもいた。
皆早くワークを始めたくて仕方がない素振りだ。
「それでは、肘からやろう」私のやり方を熟知しているシリル達は、私の見本を見ると直ぐに始める。
途端にスタジオの空気が濃くなる。
この空気の密度がなんとも言えなく楽しい。
嬉しくなる。
この緊張感集中感は、彼らでしか味わえない。
さすがフォーサイスカンパニーだ。
改めて、ここが私の原点だと感じた。
彼等と一緒にいる時が、何とも豊かな気分になる。

「難しい」ファブリズがまず音を上げた。
皆、私と組んで体感しようと周りに集まる。
この雰囲気やプレッシャーが私を成長させるのだから、私にとっても有り難い稽古場でありダンサー達なのだ。
恐ろしく感性の鋭いシリルは、以前に増して鋭くなっている。
その感性をクリアするのは、並大抵ではない。
だから私の稽古になる。

新しい人達は、何のことやら分からない風で、右往左往する。
古い連中は、我関せずと自分のテーマを決め、どんどん深く集中していく。
安藤さんが新人の係のように、説明をし落ちこぼれないようにする。
あっという間に昼食だ。
「難しい」と言ったファブリズの事を、安藤さんと「彼も成長したね」と喜ぶ。
外部からのゲストも数人いるが、目が点になっているだけだ。
それは仕方がない。
フォーサイスカンパニーのダンサー達は、蓄積があるから取り組めるが、初めての人は何のことやら分からない筈だ。
しかし、それはかまっていられない。
あくまでも、カンパニーのダンサーの為に開いているワークショップだからだ。
私も時差ボケがあるから、頭が回らないので手が廻らない。
明日は新しいダンサーにも分かるように、丁寧に説明しながらやろう。
5時30分ワークが終わってしまった。
「ええ~、もう終わり!」
「明日や明日」

1時間位しかやっていない感じだ。
嘘だろう。
皆が私のワークを求めてくれているのが、言葉ではなく伝わってくる。
それが時間の感覚を無くしてしまうのだろう。
人は間違いなく関係できるのだ。
ファブリズと安藤さんの3人で食事を終え帰宅。
風呂に入ったら、今日は眠れるだろう。

胸骨と肘の連関 胸骨と肘の連関
両腕のねじれ 背骨を感じる


2015/2/19 「稽古になる喜びはここにある」


昨日の夜は白身の魚のコロッケ。
コロッケというよりも薩摩揚げのような食感だった。
食事を早々に切り上げて部屋に戻った。
風呂を熱めに入れ、芯から冷えている身体を温めた。
バスタブが有るのはほんとに有り難い。

その御蔭で、朝5時頃までは眠れたから、5~6時間は寝ただろう。
例によってパン屋が空くのをまって、プリッツエルと日本の揚げパンに似ているパンを買った。
それはラズベリーの揚げパンだった。
「朝からこれかい」、と自分に突っ込みながら、オレンジジュースとコーヒーで朝食を済ませた。

今日の朝は、胸骨と肘の関係性から入った。
そして定番の後ろからの羽交い締め。
こういったきちんとストレスが掛かる稽古をしなければ、そのことが本当に出来ているのかできていないのかが分からない。
何も言わずに、皆は直ぐに稽古にかかる。
始まると組んだ相手同士で、アドバイスの仕合をしながら実現へと進んでいく。
やはりシリルの感覚は良い。
だから、質問も皆とは違って深いところを聞いてくる。
答えは動きで見せる。
それが彼には一番なのだ。

たった一日しか経っていないが、カンパニーの連中はそれぞれに開かれてくるのが怖いくらいだ。
これだから彼らとのワークが楽しいのだ。
彼らの成長や変化が、私の何かを触発してくれる。
それが、その場に必要なワークや、新しいアイディアが生まれるのだ。
ゲストに日本人ダンサーが数人いるが、こちらは何一つ変化も成長もない。
何が違うのか?

お昼は、安藤さんが部屋で玉子丼を作ってくれた。
お腹に優しい食事は外国では一番有り難い。

昼からは足から胸骨への連動で全身汗まみれだ。
足の親指から胸骨へはどう繋ぐのかと質問が飛ぶ。
「繋がったら分かるよ、それを発見するのが稽古だ」
ティルマンもシリル他最初から私のワークを受けている連中はニッコリ。

舞台で必須の「関係性」についてのワークに徐々に入っていく。
手のひらでの誘導、羽交い絞めに対しての突き。
手のひらでの誘導は、これまた定番の勘違い組が二人で楽しそうに動きまわる。
しかし、カンパニーのダンサーの凄いところは、そういった雑音に我関せずだ。
黙々と、二人で意識の変化の探りあいをしている。
その空気感の違いを感じ取れない「楽しい」組。
馬鹿か?
とりあえず、周りの意識に気づかない奴は、舞台に上がるな。
安藤さんもキレそうになっていた。

あっという間に6時になってしまった。
しかし、ダンサー達のコンタクトの強さは秀逸だ。
それが空気の密度を増す。
私がかすかに気配を変えるとキャチする。
意識の変化をキャッチする。
これは、2005年からカンパニーのワークでは定番中の定番だ。
これをするためには鋭い正面向い合いがいる。
そういえば、当初から向かい合えない人はこのワークになると姿を消していたことがあった。

夜は安藤さんの部屋で「おかゆ」。
梅干しとおかゆでまったり。
話し込んで、気がつけば12時を回っていた。
急いで部屋に帰り、風呂は明日朝にしそのまま寝た。
お陰で目覚めは6時30分。
今日は、昨日の続きから正面向い合いだ。

 

2015/2/20 「関係は空気を圧縮する」

「では、正面向かい合い」というと、シリルもティルマンもヨネも、みんな大喜びだ。
これをやるとほんとに瞬間的に空気が固まる。

2005年に初めてこれをカンパニーでやった時、皆は引いた。
それは対立という、潜在的に持つ何かが動くと感じたからだ。
しかし、私がそれぞれに向かい合ってやると、たちまちこのワークの虜になった。
民族の違いや民族の対立が、多民族カンパニーの持つ宿命だ。
それが「正面向い合い」で、見事に消え去ってお互いが「初めて人を見たかもしれない」と喜び合っていた。
涙した者もおり、その人達は私に深く感謝してくれていた。
そういった、初めての体験がカンパニーを結束させたのだ。
そして、舞台には必要不可欠の能力だと彼らは気付いてくれ、行く度に「リクエストは」と聞くと、決まって「正面向い合い」という。

今回は初心者もいるので、まずは1対1。
そこからから1対2、そして円陣になっての向い合いだ。
勝手知ったる者は、どんどんワークを進めていく。
カンパニーへ入った新しい人達は、戸惑いを見せるが、中でもロシア人は食らいついてくる。

シリルとヨネの向かい合いを見ていると、かなり密度が濃いので、新しい事を試みた。
という違う雰囲気が漂うと、他の連中は直ぐに気付き周りに集まってくる。
それが感度の良さだ。
完全にコネクトされているから、直接響くのだろう。
距離を開けた向い合いの真ん中に割って入るのだ。
但し、二人のコネクトを切断してはいけない。
という飛んでもなく難しい条件を与えた。
見本を見せると「OK」という、意思のない声が飛び交う。
「やってみるけど…でもね」という意味だ。

続いて一人の意識の流れに乗り、そこに入り込む、を6時迄取り組んだ。
というよりも、例によって6時になってしまっていたのだ。
もちろん、彼らは一流のダンサーだからタイミングで、流れに乗ったように見せることはお茶の子さいさいだ。
しかし、私がやってみせると、その違いを直ぐに分かり、工夫が始まる。
時々ティルマンが「How?」と口からでる。
私が「?」という顔をすると、「Sorry」と笑う。

こんな稽古を、こんな雰囲気の稽古を、ずっとしていたいとつくづく感じるフランクフルトだ。
朝10時30分頃スタジオに入り、あっという間に6時、あっという間に1日が終わる。これだけ時間が短いのは久し振りだ。

今日は、フランクフルトへ来て初めての晴天だ。
それこそ気分が晴れる。

 

2015/2/23 「身体で考えられるからだ」

  
「自分はこの20年間何をやってきたのだ?」
「この体感が欲しくて、どれだけ治療費を払ってきたことか」
様々に興奮した言葉が飛び交う。
ワークショップの定番の全身ストレッチだ。
そう言えば、今の全身のストレッチは彼らは知らなかった。
「皆がやっているストレッチは、外側の筋肉を扱うものだから、全身は繋がらないよ、一寸ここを触ってみて」とファブリズにお腹を触らせ、深部をストレッチさせている手順を感じさせた。
「全く違うものだ」
「股関節の繋がりがよく分かるし、故障を自分で治せるね」
それぞれが、自分の身体と私の身体とを比べ、違いを知っていく。
「これが出来ると、バレエのポジションはどれも取りやすくなるよ」
いうが早いか、直ぐにバレエを始める。
「ちゃうちゃう、股関節はこう伸ばすと足の指先まで伸びて、そのまま胸骨を前に出すと、ほら足が上るやろ、あっ、すまんすまん日本語やった」(大爆笑)
「日野、それは完璧なアラベスクだよ」

この全身ストレッチは、彼らにとって「関係する」ということと同じくらいセンセーショナルなもののようだった。
これは、日本でもフランスやベルギーでも稽古をするが、残念ながら誰一人として、これほどの感動を持っていない。
「ああ~凄い」という程度だ。
つまり、新しい知識は凄い、と言うように知識として得て、自分とは切り離しているのだ。
私がいつもいう「頭を満足させただけ」である。
しかし、彼らはどんなことでも、自分の身体で考え工夫し、そして身体で答えを出す。

「身体で考えろ」と教室でもワークショップでも言うが、身体で考える事が出来るようになるには、頭で考えるのと同じくらい、身体と会話をする量を持たなければそれは出来ない。
しかし、大方は「身体で考えろ」というと、「身体で考える」と頭で考えてしまう。
それでは、身体が一歩も前に進まない。
カンパニーのダンサー達は「身体で考える」事が出来るくらい身体を駆使し、対話をし自分の身体に目を向けているのである。
だから、「全身ストレッチ」という知識を得ているのではなく、自分の身体と私の提示する身体とを、会話させており、そのことで起こる、身体の変化に驚き、喜ぶのだ。

そう言えば、数々のワークは彼ら、フォーサイスカンパニーのダンサー達を知った事で、考えだした事が多い。
その意味で、フォーサイスカンパニーで2005年に行った初めてのワークショップが、私の原点なのである。
だから、彼らに感謝せずにはいられない。
いかに日本の身体文化が深いものかを提示し、彼らに憧れさせることが出来るか、というテーマを持って臨んだ。
その意味で私にとっては真剣勝負だったのが、カンパニーでの初めてのワークショップだったのだ。

午後に入り、正面向い合いから完全な関係を目指した。
フォーサイスのマネージャーのチェリーも顔を見せ、お互いに再会を喜んだ。
1対2の向かい合いから、多人数になっていき、全員が同調して動いてしまう、というものだ。
これは、日本でのワークショップやショーケースで散々稽古をしたが、残念ながらものにはならないかったものだ。

しばらくすると、アチコチで歓声が上がる。
「感じる・関係する」という事で起こる出来事に、彼らの概念がひっくりかえってしまったからだ。
「感じる・関係するというのは、ほんとに奇跡をもたらすだろう」
「本当にそうだ、我々が知っている、感じるも関係するも約束だったのだ」

私の提示するワークは難しい。
というよりも、自分の持つ固定観念の転覆がなければ出来ないのだ。
しかし、「難しい」は出来ないではない。
現にカンパニーのダンサー達は、その手がかりを完全に掴んでいる。
それだけでも、私自身が身体を突っ込んで考えて来たことが、無駄ではなかったと感じる。

今日も、気が付けば6時を回っていた。
強烈なスピードで時間は通り過ぎる。
この日は、皆でラーメンを食べにいく。
日本人がやっている店だそうだ。
安藤さんが「どこにこれだけの日本人がいたの、というくらい、日本人だらけですよ」と言う。
8時に現地集合。
そこにはアマンシオがいた。
彼はバレエの先生として大忙しで、明日はスウェーデンだそうだ。
ビールで乾杯!おかげで9時まで眠れた。

「広場の貸本ブース」 
コーヒーが飲みたくて、商店街を歩いていた。
少し広場になっているところに電話ボックスのようなものが立っていた。
何かと思い近づくとそれは小さな本棚だった。
???
立ち止まっていると、袋を下げたおばさんが近寄り、袋から本を取り出しその棚に入れた。
もしかしたら貸本の無人版?
後で安藤さんにきくと、やはりそうだった。
まさか貸本ブースがあるなんて。
しかも、鎖も鍵もしていない。
治安が良いのか、本など盗まないのか、ボックスを壊さないのか。
う~ん、深い。
しかし、アパートの前に駐車している車のウインドウは割られていたが。

貸本ボックス hohenstrabe

 

意識の切り替えを感じ取り動く。
手を握る速度に合わせて相手を誘導する。
足から動くな、それでは先に観客に分かってしまう。
どんどん関係性の深みに入る為の指示を出す。

ここに来て、既に2人がこぼれ落ちている。
残念だが、こればかりは仕方がない。
最初から溢れるだろうな、と感じていた二人だ。
身体が動くだけでダンサーになり、ある程度認められている人。
それにプライドを持っているダンサーには、私のワークは耐えられないだろう。
自分自身を突きつけられるのだから。

こぼれ落ちない人達は、感覚が益々鋭くなっていく。
それは新たな視点を持ったのと同じである。
その人達のエンジンはどんどん回転するから、休み時間も忘れてしまう。
今日も気がつけば6時を回ってしまっていた。
午前中も気が付けば2時を回っており、遅いランチになってしまった。
それでも、稽古を続けている人もいる。

今日のランチはスパゲッティにした。
うどんのようなスパゲッティに、胃袋は直ぐに満腹指令を発した。
「一体俺は何を食べているのだろう」パスタだ。
どうすれば、こうまずく作れるのか。
どうすれば、こんなうどんのようなスパゲッティになるのだ?
そう言えば、フォーサイスカンパニーのワークショップの帰りにオランダへ行ったことがある。
オランダから一度フランクフルトに戻り、そこから帰国する事になっていた。
だから、空港の近くのホテルをとり、空港へ晩御飯を食べに行ったことがある。
中華ならマシだろうと重い、中華のビフェで食べた時、妻もその時の通訳をしてくれていた万里子さんも同時に顔を見合わせ絶句したことがあった。
そうか、ドイツではまずい所はほんとにまずいのだ。
半分以上を残し、スタジオに戻った。
昼からの稽古は、その重いお腹を引きずりながらやらなければいけない。
眠気との勝負になる。
「シエスタの稽古をしようか」で「ブラボー」と歓声が上がる。

一つ一つのワークが、すべて作品に繋がるように、その場で応用を考えさせる。
同じアイディアだが、2つの組はそこから異なったアプローチをしていた。
これは面白かった。
明日は、この2つの組を一つにし、流れに乗るというパーツを入れて、短い作品になるようにやってやろう。
6時前には、ある種の作品になっていた。
こういった事が出来るのが、一流のダンサー達だ。
それぞれが工夫をし、楽しんでアイディアを出し合っている。
それを見ていて「そうしたいのなら、こうした方がいいよ」と動いて見せる。
そんな繰り返しが楽しくて仕方がない。

「日野はヨーロッパに住まないのか?」との意見も出る。
カンパニーが解散したら、それぞれがバラバラになる。
新たにカンパニーに入るものもいれば、フリーランスになるものもいる。
皆は、私のワークショップで顔を合わせたいのだ。
嬉しい話である。

明日は土曜日。
残すところ2日しかない。
ということに気付いているから、集中度が増し自動的にワークショップの密度が濃くなる。
今日は中日なので、何か復習したいものは無いかと質問すると「全部」だという。
それも嬉しい答えだ。

全く関係の無い話だが、人は求められる、他人の役に立っているということが、どれほど自分を充実させるかがよく分かる。
彼等と共にいると、生きていて良かったと、オーバーではなく思う。

今日はスタジオ内の熱気とは真逆の朝から冷たい雨だ。

2015/2/24 「フランクフルトも春かな?」

最後はグラッパ!もちろん一気飲み。
直前に少し味見をすると「こらあかん」テキーラという感じだった。
と思っている時「乾杯!日野!」これは効いた。
ワークショップを終えて、イタリアンレストランでパーティを開いてくれたのだ。

最後のワークは、気が付けば7時だった。
例によって、全員が一人一人に「ありがとうございました」だ。
この儀式はフォーサイスカンパニーでの初めてのワークの時に始めたものだ。
「日本式だよ、一人では稽古が出来ないだろう、他人がいるからこそ、一緒に稽古が出来るから自分も相手も成長するのが分かるだろう。だから、皆が皆にお礼をしよう。そして、相手の役に立つようになろう。相手の稽古が捗る自分になろう」と話をし始めたものだ。
皆、その事に心を動かした。
お互いが正座し向かい合う姿は、ほんとに美しい。
10年経った今、ファブリズもシリルも皆10歳年をとっているが、お互いに礼をする姿に当時の彼らが蘇った。

最後のワークのリクエストは、色々あるが結局は「関係性」に尽きた。
まずは、足のねじれ、それを確認するための骨盤と膝との関係等々、「どうやって実現していくのか」つまり、考え方と検証法を改めてやった。
言葉と実際の間をどう埋めるのか。
幻想に過ぎない言葉と、実際化出来る言葉との選り分け。
こういった事は、全部私自身の実体験から生まれているものだから、どこから突っ込まれても答える事が出来る。
もちろん、答える私自身が勉強になるのだが。

2年間のブランクはあったが、再び彼らに会えてほんとに良かった。
私自身の検証が思う存分出来たし、彼らの感性の素晴らしさを再認識出来た。
昨日も書いたが、本当に彼らの為の日野身体理論かもしれないとつくづく思った。

フォーサイスカンパニーとしては、もう二度と会えないが、また皆と会える機会が有ることを期待するし、もっと成長した姿を見たい。
ライリーやファブリーズは3月に日本でワークショップをする。
そこでまた会える。
アマンシオ達は公演で来るという。
皆フリーになるから、忙しくならなければ生活が出来ないのだ。
シリルが「リアルな現実になった」と喜んでいた。
そう言えば、シリルが初めて日本での私のワークに来た時はまだ25歳だった。

今日は皆のリクエストで、フライトの時間まで番外のワークをすることになっている。
昨日の雪とはうって変わって晴天だ。
先ほど、パンを買いに外に出たが、暖かくて「春」が目の前に来ている事を予感させてくれた。
ここフランクフルトの街は、パリと比べてのんびりしている感じがする。
道路の広さや地域のかげんかも知れないが、ボーっと商店街を歩いていられるのが嬉しい。

 

2015/2/26 「フランクフルトから帰国」

  
最後の最後のワークを終え、カンパニーのダンサー達全員と別れを惜しんだ。
最後の昼食を安藤さんの部屋でいただき、午後4時タクシーが迎えに来てくれた。
何でも今日の朝も雪で、道路はかなり渋滞したようだ。
チェックインカウンターに行くと、日本人ツアー客が沢山いたので、プレミアム・エコノミーにアップグレードし眠れるようにした。
それが功を奏し、機内では熟睡したようである。
眠いの眠くないのか分からない時差ボケの状態で成田から電車に乗った。
直ぐにファブリズがワークショップで京都に来るし、安藤さんも月末には帰国する。

私にとっては、良い刺激になった今回のフランクフルトだった。
何よりも驚いたのは、ベテランのヨネさんだ。
ベジャールの学校を卒業後、色々な有名ダンスカンパニーで活躍した後、フォーサイスカンパニーに入った。
彼女は肩関節も股関節も亜脱臼しているのではないか、と思えるほど可動領域が広い。
とにかく柔らかいのだ。
だからダンスは、それを活かした動きが多い。
2005年に初めて私が招聘され、カンパニーでワークショップを開いた時、その柔らかさを止める事もしなければ、身体に刺激を感じることが出来ないし、繋げて使うことも出来ないとアドバイスした。
その後、工夫を重ねていたのを知っていたが、今回それが明確に現れていた。
身体の緩みを止めるという事が、完全に出来るようになっていたのである。
これには正直驚いた。
ベテランダンサーで、別段私の言うことが出来なくても、十二分に自分の身体の個性を活かし踊ることが出来る。
にも関わらず、私の指示にしたがってくれていたのだ。
その事が、今後の彼女のダンス生活を新しいものにしていく。
彼女もそうしたかったのだ。
ベルリンで40歳以上のダンサーを集めたカンパニーが起ち上がり、彼女はそこに所属する。
きっと、また新しい境地を確立するだろうし、決して止まることは無い筈だ。
それこそ、アーチストである。

後日、この新しいカンパニーが11月に起ち上がる事を聞いた。
その起ち上げのコンセプトを作りたいからと、ワークショップのオファーが入っており、現在日程の調整中である。
今年は、何度ヨーロッパへ行くことになるのだろう?

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身体塾
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・ 身体を連動させる
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●海外での指導

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